レモンツリーホテルプロジェクトができるまで。すてきな過疎化編

象と太陽のこと

さて、続きを書こう。

世の中で何がなんでも後戻りできないことがあるとしたら、それは屋根を取っ払った家の修繕だ。先に進めるしか無い。

古民家の屋根を取っ払ったあと、軽くなった建物をジャッキで上げ、基礎石の交換などを行った。
男木島でこのような作業をするたび、毎回決まってピラミッドを思い起こさせられる。

前回書いたように、基礎に使う鉄筋コンクリートの材料が10トン。急で狭い坂道と階段、相当、男木の道にこなれた人間でないと農業用運搬車も使えない。(センチ単位で落ちたりぶつかる箇所が多々ある)ましてやコンクリートの材料を手で練ってくれる物好きな業者さんも居ない。
これには本当に頭を悩ませた結果、今も悩んでいる。
結局は、働きアリのように少しづつ進めるしか無い。

もう一つは、室内から水が湧き出していることだ。
島の建物は段々の石垣の上に建っている。上の石垣から流れ落ちてくる水がたいていどこかから湧き出す。うまく井戸などで吸い上げることができればいいが、水の流れも時とともに変わってゆく。
今回はキッチンになる予定の場所から地下水がお出ましになっている。

男木島で作業をするたび、必ず予期せぬトラブルが付いて回る。
都市部で今回のような浸水が有れば、建物を取り壊して、まず、地盤の工事をして無かった事にしてしまうだろう。
残念ながら、ここ男木島では便利なリセットボタンは存在しない。

一つ事が起これば、それをじっくり観察し、試行錯誤し、なんとか折り合いをつけてゆく。
今回も溝を掘り、雨の日、晴れの日、水の様子を見ながら集水パイプを設置し、なんとかなるレベルにたどり着いた。
観察すること2ヶ月。
忍耐力との勝負だ。

こういう事が起こるたびに、何のために、ここまでして、こんな馬鹿げたことをやっているのか?その意図がブラッシュアップされてゆく。

宿泊施設が少ない島にホテルを作る。というスタート地点から、トラブルや困難というファクターを通すことにより、自分の中の本当の想いみたいなものが徐々に覗き始める。
恐るべきセルフカウンセリングシステムだ。
もちろん、やっていることと想いが物理的に釣り合わないで頓挫することだってある。

今回感じたことの一つは、サービス業がおもしろいということ。
人を喜ばすことで自分たちも豊かになってゆく。循環として実に正解だと思う。
美容室、飲食業を通してサービス業に長いこと携わってきたけれど、宿泊業は、ある意味、お客さまの全ての時間に関わる仕事だ。人に喜んでもらえるチャンスが多い業態としてはトップだと思う。
それが1つ目の理由。

もう一つの理由は、単純にこの島が好きだからだ。
にっちもさっちもいかない日々を繰り返しながら、ある瞬間、この場所をとても気に入ってる自分にふと気づく時があった。
小さい頃から住んだことのある地域では起こり得なかった想いや、感じたことのなかった気持ち。今まで、住んでいる場所を良くしたり、守ってゆくというような考えを抱いたこともなかった。
その気持ちを認識したとき、自分の中ではとても重要な部分に差し掛かってるということがなんとなく想像できた。
そういう場所に巡り会えることは幸せなことだろう。きっと。

子どもを預けられるご近所さんは何人いるだろうか?
食卓を共に囲めるご近所さんは何人いるだろうか?

この島で感じる安心感や、豊かさ、そういうものを子どもたちにも残しておいてやりたいと思う。
そのために現時点でのTodoリストを書き出したとき、集落やコミュニティーの維持や、環境の再生など、やるべきことのスタートとしてホテルを作ることは理にかなっていた。
今後、一人で数件の家を維持しないと集落の維持ができない時代に突入する。
うまくやれば結構楽しい未来ではないかと楽観的ではあるが、どうだろうか?
せっかく訪れる過疎化を、楽しむ時代になればいいと思う。
次回に続く、、、

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