太陽高度と夏の色

お盆を境に、空の色や海の色、そこに浮かぶ雲の形や空気の香りが違ってくる。
それは、太陽高度の変化が、日光の入射角を変えることで、目に飛び込む海や空や植物の色相や彩度に微妙な違いができて、視覚的に季節感を感じ取っているのだろう。
男木島に暮らしてから季節の移ろいがよりはっきりと分かる。

様々な人に会うたびに、皆さんそれぞれにプロジェクトのことを気にかけてくださっている事に気付かされる。
劇的な進捗が見えない状況に、堪忍袋の緒が切れて見放されてしまうのかと思ってしまうのだけれど、皆さんとっても気長に見守ってくれている。
ありがたいことだ。

自分の好きなことで、いかにお客さまに喜んでもらうかの限りない試行錯誤の連続。
「自分の好きなことで」と言うと誤解を生むかもしれないけれど、それでも、自分が心から楽しめない仕事では、やはりお客さまにも楽しさを伝えることができないから仕方がないのだ。
そして、僕は自分に備わっている直感みたいなものを割と信じていて、人生の羅針盤みたいな機能を果たしてくれていると思っている。
なんせ、この直観みたいなのがピン!!と反応するときは結構スムーズに事が進むし、ざわついて落ち着かないときは少し道から外れている。
ちょうど、マニュアル車のギアチェンジみたいなもので、自分のスピードとギアの回転数とがフィットしていて、なおかつうまくギアがなじむポイントにすっと入ることができるとスムーズに進むし、少しずれるとガタつく。
何をやっても全くダメで、気分も乗らないときは見当外れ。エンストだ。
僕の歩むべき道じゃない。
そう言ったところだ。
怪しいと思う方もいらっしゃるだろうけど、どうあがいても進まないものは進まない。
潔く受け入れるしかないのだ。
大体は、ドキドキワクワクするところから始まるのだけれど、それは、まだ方向が決まった程度の話で、そこからしっとり落ち着くまでに多くの失敗や遠回りを繰り返して、収まるべきところに収まっていく。
この夏はそういった夏だった。

さて、今回、レモンツリーホテルプロジェクトの挑戦のメインテーマは、「人口減少社会の楽しいデザインを描くこと」だ。過疎化が進むここ男木島で、島ならではのサーキュラーなエコシステムを構築してゆく。この循環の流れに多くの方を巻き込むことで、それぞれのwell-beingに寄与し、より豊かさが循環してゆく。
そんな未来をデザインした。
これが進むべき方向であり、マイルストーンである。
そこに行く道筋を付けるのが骨折り仕事であり、今回の醍醐味でもあるのかもしれない。
そして、基本的に一貫して言えることは、僕は資本主義社会に対して単純に不慣れで丸腰なのだ。
そこに輪をかけて、ゴールに一直線で進みたい気持ちと、少し寄り道も経験してみたいと思う好奇心が邪魔をして、ちょうど、黒ひげ危機一髪のアタリを刺し抜居てしまいたくなる衝動のように、様々な地雷も踏んでみたくなってしまう。
うまくやりたいけど、今のうちに多くの失敗も経験してみたいという、良く分からない、経験欲とでもいうものが出てくるのだ。
そしてその目論見の多くは、僕の立派な羅針盤のおかげで、海の藻屑のように現れては、消え去ってゆく。

この秋に差し掛かるまでの間に、多くの方々の時間を借りて、何度も何度もプランの設計や変更を相談させてもらった。
設計事務所にも幾度となく図面を差し替えてもらったり、やり直してもらったりした。
今のところもうこれ以上、考えれることはない、何もできないと言ったところで、ようやく次のステップに入ろうと思えたところだ。

僕は、人間が作った造形と、植物が融合した風景にとても魅力を感じる。
そこには、人間と自然の可能性や、調和といったイメージがあり、文化と自然の良いバランスを感じさせてくれるような気がして、仕事抜きにして、ずっと考えたりデザインを楽しんでいられる。
10代のころからリゾートホテルの写真集を見るのが趣味だった僕にとって、今回の設計を担当してくれている安部さんが、ジェフリー・バワみたいなのが良いね。と言ってくれたのが本当にうれしかった。
そんな空間の中で読書したり、物思いにふけったり…
そんな場所を持つことは、人生を豊かで彩りのあるものにしてくれる。
ちょうど、旅先の居心地のよい木陰に腰掛けてうつらうつらするような。
自分たちが大切な場所に大切なお客さまを迎え入れる。
ささやかだけれど、宿泊もできる設備をつけて。
そんな場所であったらいいなと思う。
そんな場所をつくろうと思う。
そう考えると、ますます自分の手を動かして、様々な箇所を作ろうと思える気力がわいてきた。

幸いにもまだ時間はちゃんと残されていて、今から作業を開始すれば、秋にはスペースとしての運用が開始できる。
今のカフェの延長としても使える。
その後、順調に進めば、春までには少し規模が小さいかもしれないが宿泊もスタートできるだろう。

夏の経過報告に代えて…

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